食育基本法が施行されて早10年余り。関連予算の増強に伴い、全国的に食育イベントが盛んに実施され、各種媒体やネット等でも食育に関する情報が溢れるようになった。しかし、その中には、科学的根拠に乏しいもの、不安を煽るような偏った見解もあり、残念に感じることがある。

例えば、全国に3万店舗以上もあるファストフード業態への批判。有職主婦が増え、時短調理や外食頻度が高まる中で、日常生活に身近なファストフードを、摂取してはいけないもの、悪いものだと説き伏せるのには少し無理があろう。

また、しばしば国産品VS輸入品の構図で論議される安全性。日本の食肉需給の約4割は輸入で、自給率を高めることは重要だが、「国産だから安全安心」という漠然とした国産の安全神話のような論調にも抵抗がある。輸入品に不安があるようなアプローチをしても、けして国産品の信頼性を高めることには繋がらない。

それが問われる一つは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの食材調達問題。グロバールGAPを基準に、国際認証されたマネジメント規格やHACCP対応が求められれば、現状のままでは日本産の食材はほとんど使えないことになってしまう。

どんな食品にもリスクはある。客観的な科学的評価に基づく安全に対し、安心は主観的だ。行政や供給企業だけに責任を委ねるのではなく、消費者もリスクについて理解し、自らが考えて判断する力を身につけること、その能力を子供のうちから育むための食育が大事だ。

食材の生産・流通過程や栄養を学ぶことも大切な要素だが、まず「感謝していただく」という気持ちを醸成したい。

娘が5歳の時に「いのちをいただく~みいちゃんがお肉になる日」(講談社刊)という絵本を与えた。熊本県の食肉センターに従事された坂本義喜さんの話。それまでは食べ残していた筋張った肉も食べるようになった。牧場や農場にも機会を見つけ連れて行き、牛の給餌や野菜の収穫をし、食卓でもその体験を語りあいながら生産者の思いなどを伝えている。(全国農業新聞2016.7.8付)