2018/10/03

全国農業新聞/売り場の大きな転換期

いま、スーパーの売り場が大きな転換期を迎えている。小売業が恒常的な人材不足に陥っているためで、各社は精肉や鮮魚など生鮮商品のPC(以下、プロセスセンター=集中加工場)化に向けて本腰を入れ始めた。

 一般にスーパの生鮮部門の商品化は店舗で原料を加工する①インストア加工と、工場で一括加工する②PC加工に二分化される。

①では、鮮度感や顧客ニーズに応じた商品をその場で作れるなどのメリットがあるが、専門技術や知識が必要で人件費がかかる。一方、②は工場から均一化した商品が店舗に届くため売り場に陳列する人手だけで済むが、差別化が図りにくく、欠品やチャンスロスなどの課題があった。

しかし、最近ではインストア加工の企業がアウトパック商品を積極導入したり、自社でPCを立ち上げる動きが急速に進んでいる。

 部位の細かい牛肉の商品化では、商品力は個人の技量に依存するところが大きく、職人と呼ばれるスタッフが各店舗に配備されている。しかし、すでに定年を迎えた職人が契約社員やパート社員として働くケースも少なくない。それは商品づくりの要となる人財が今後3〜5年以内に引退することを意味する。

最近では熟練した技術が不要なスペックで納品されるようになり、店舗での加工が簡素化されたが、かえって技術を習得する機会は減った。「肉の脱骨から商品化できる経験を積んだスタッフは本当に少ない」(精肉バイヤー)との指摘も。

これは日本中のスーパーが抱える悩みと現状だろう。PC化への切り替えも容易ではない。自社でPCを運営することになれば、稼働率を上げてコストメリットを追求するため供給先(店舗数)を確保しなければならないし、インストア加工のような魅力ある商品をつくるための人材育成にも時間を要する。

勝機があるとすれば、消費者のライフスタイルやニーズもまた大きく変化していることか。有職主婦の増加で家庭での調理時間は年々短縮。世帯人数は減り個食化が進む。食材すべてのデリカ化が進み、素材ではなく、より加工度の高い簡便商材が動くようになった。こうした需要に応じたPC商品を効率よく開発し、いかに消費者を惹きつける売り場に落とし込むか。娘を持つ有職主婦の1人としても期待したい。

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