2017/11/01

全国農業新聞/日本最西端の地・与那国島

 東京からの直線距離が2000㎞を超え、隣接する台湾までは約111kmの距離にある日本最西端の地・与那国島(面積約28.95k㎡、人口約1700人)。断崖絶壁に囲まれ、荒々しい波が打ち付ける島の別称「どなん」は渡航するのが難しいという意味「渡難」に由来する。

 熱帯雨林地方に属し、夏には激しい台風、冬には連日の降雨が続き、晴天の日はほとんどない。 こうした厳しい地理条件の中で、与那国島生まれの銘柄牛「どなん和牛」のブランド化に挑戦しているのが真嘉牧場(金城信利代表)だ。

 島で唯一の肉牛専業農家である真嘉牧場は和牛繁殖農家であり、約200頭の母牛を飼養する。当初は自ら肥育まで手がけた「どなん和牛」の販売を目指していたが、与那国島では輸送コストが高額になり、濃厚飼料を安定確保することができず、断念せざるを得なかった。

 「台風や冬場の時化で2週間以上も餌が届かないこともしばしば。天候に大きく左右されるこの島で、お客さまに美味しいと納得してもらえる牛肉をお届けするにはどうすべきか悩み抜いた」(金城さん)。

 出した答えは繁殖と肥育の分業。真嘉牧場の子牛を信頼のおける肥育農家に託すこと。神戸ビーフの專門卸であり、自らもこだわりの黒毛和牛を手がけていた石垣島きたうち牧場に「どなん和牛」の仕上げを委託することを決めた。

 「どなん和牛」としての特徴を出すため、地元の草をたっぷりと与え差別化を図り、悪天候でも輸入草に頼らないよう採草地も大幅に拡大した。年間出荷頭数は10頭程度と少ないが、海風に運ばれミネラルを含んだ栄養価の高い牧草を食べた牛肉は赤身に独特の風味があり、希少性とその味わいの良さで着実にファンが定着している。

 すでに都内の有名ホテルでのフェアが開催されたほか、11月からは大阪・心斎橋にあるおおさか料理・淺井東迎で「どなん和牛会席」(昼3500円、夕8000円・税別)がスタート。与那国島出身である店主が故郷で育った「どなん和牛」やその他の食材をふんだんに織り込まれた特別コースとなっている。

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