肉マイスターとして活躍中の音楽家・田辺晋太郎さんがプロデュースする会員制焼肉店「西麻布 焼肉Ⅹ~TEN~」が3月25日、東京都港区の西麻布星条旗通り沿いにオープンした。
究極の焼肉を目指し、牛角創業者でダイニングイノベーションの西山知義会長と田辺氏がタッグを組んだもので、プラクティスランチに参加させていただいた。
同店のコンセプトは①本当の和牛の素晴らしさを伝える②本能に訴えかけるタレ焼肉の美味しさ③最高の焼きで仕上げる匠みの焼き④紹介制の会員制焼肉(全室個室)⑤肉とワインのマリアージュ-の5つ。
店名のTENには天、頂点、最上を目指すという意味と、全ての生産者、食材に感謝し、十割余すことなく伝える責任の想いが込められている。
核食材である肉は都萬牛(宮崎)、但馬玄(兵庫)、松阪牛(三重)をセレクト。「和牛は重たいなという既成概念化した常識が非常識であることを証明したい」(田辺氏)という。
特筆すべきはロースターと鉄板の二種類の熱源をもつオリジナルの焼き台を配備した点。肉の部位やカットにより火入れの手法を変え、素材の力を最大限に引き出す。
一般的な焼肉とは異なり、お客の目前でシェフが調理し提供する。鉄板焼に近いスタイルであり、外観の変化、音、香り…五感で味わうことが意識されていた。演出を含め細やかな目配りが求められる。
基本コースは1本のみで18品・32000円(税・サービス料別)。コンソメスープ、有機野菜を使った6種のナムルの後に、大きな宝石箱に入った肉の塊が仰々しく登場する。本格的な食事の始まりを前にお客の期待度は膨らみ、食事を一層楽しくさせる。どの料理にもデザートに至るまで様々な仕掛けがあった。
トリュフ、うに、キャビアのような高級食材も差し込みつつも、あくまで柱は王道のタレ焼肉。タレに絡めた極上焼肉と白飯を掻き込んでいると “昔大好きだった焼肉の味”に回帰させるあたりが心憎い。焼肉の醍醐味を知り尽くした田辺氏の熱を感じる空間だった。