イトーヨーカドーグランツリー武蔵小杉店(神奈川県川崎市)で実施される「お肉の日」の販促が3年目を迎えた。一般にスーパーに並ばない希少性の高い銘柄牛を片平梨絵のおすすめ肉として毎月末に販売してきた。
ヨーカドーの中でもトップの牛肉売上を誇る同店は品質を重視する顧客が定着しており、試食販売の反応がとても良い。生産者の名前を冠した群馬県産の増田和牛もその1つ。
出荷量は年間200頭弱と少なく、小売では地元高崎のリージョナルチェーンで販売される程度。首都圏ではグランツリー以外ではまず流通しない。知名度こそ高くはないが、華やかな霜降りがあるのに、繊細な肉質は食後の印象がとても優しく、自信を持ってお勧めしている。
増田順彦さんとの出会いは10年以上も前になる。和牛の美味しさについての取材がきっかけだった。”昔ながらの和牛の味”を目指し、但馬系の雌牛を月齢34ヶ月以上まで飼い込む。
増田和牛を最も特徴づけているのが“炊きエサ”。圧ぺんした大麦を2度蒸し上げた炊きエサを仕上げの6カ月間にわたりを牛に食べさせる。炊きエサを与えることで脂質が大きく変化し、透き通るような上質な脂になるのだという。
かつて松阪牛や近江牛などの産地で利用された炊きエサは保存期間が短く品質管理に難しさがある。多頭肥育には向かず手間がかかるが、味わいに欠かせない要素となっている。
元は肥育専門だったが、但馬系の素牛は全国的に頭数が減っていることから4年前から繁殖も開始。現在は17頭の繁殖雌牛を保有し、年内に25頭体制が整う予定。稲ワラも中国産は使わず地元で調達。あくまで自然に即した昔ながらの手法を大切にしている。
グランツリーの販売には、増田さんが必ず毎回売り場に駆けつけてくれる。カゴいっぱいに自らの肉を購入し、手がけた牛がどのような味に仕上がったのか、どのようなお客が購入されていくのか、自分の目で確かめていく。増田さんの志までお客様に伝えたい。私もそんな気持ちで売り場に立っている