2018/09/04

全国農業新聞/八重山郷里牛の海外市場での評価

日本初、子牛農家によるブランド牛「八重山郷里牛」が海外市場で評価を高めている。八重山郷里牛は2014年10月に初輸出されて以降、マカオ、タイなどの高級ホテルなどで富裕層を中心に提供されてきた。

ことし5月からは台湾向け輸出も始まった。7月にはミシュランガイド東京で3年連続一つ星を獲得した【石垣吉田】が「マンダリン・オリエンタル・タイペイ」内にグランドオープンし、八重山郷里牛をメイン食材として採用した。

この結果、八重山郷里牛はアジア圏に月間7頭ほどのロース、ヒレが輸出されるようになった。他国からも問い合わせが続く状況で、生産体制の増強が迫れている。

八重山郷里牛は沖縄・石垣島、与那国島の和牛繁殖農家の有志からなる「八重山郷里素牛生産者グループ」により運営管理される。八重山生まれの子牛のうち①血統は但馬系に限定②出荷月齢32カ月(輸出用は輸出相手国の条件により30ヶ月未満も可)③雌牛のみ-が定義。

八重山で生まれた但馬系の雌子牛は、素牛生産者グループのメンバーが繁養した牛に限らず、すべて八重山郷里牛の素牛候補となり、佐賀の中山牧場、島根の松永牧場など各地の指定農家に託され肥育される。

厳しい基準を設けることで差別化を図ってきたが、ここへきて課題も出てきた。但馬系の子牛は生産性がけして良くない。また、但馬系を交配しても雄が生まれた場合は八重山郷里牛の対象外になるためだ。

増体型が人気の家畜市場では但馬系の評価は下がりがちで、八重山で但馬系を交配する繁殖農家は年々減少している。八重山郷里牛の素牛を今後も安定して確保するための仕組みが求められる。

八重山郷里牛の素牛を4年ほど前から毎月導入している松永牧場・松永直之専務は「当初は子牛が小さくて心配したが、枝肉成績はもちろん、何より食味の評判が非常に良い。八重山で但馬系の交配が増えていないのが惜しい。但馬系の出荷が増えれば積極的に導入したい」と意欲的だ。

クリアすべき課題も多いが、素牛生産者グループは島の繁殖農家と情報共有を図るほか、雌雄判別精液の活用などにより但馬系の交配促進を働きかけていくことが必要であろう。

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