神戸ビーフの価格高騰が深刻だ。増大する需要に供給が追いつかないためだ。2013年に神戸ビーフの輸出が開始されて以降、海外の取り扱い店舗が拡大。国内も都心部を中心に神戸ビーフを品揃えするレストランが増え、神戸ビーフの指定登録店(2018年4月2日現在)は523店舗と5年前に比べ倍増した。
神戸ビーフの枝肉相場は2012年度(2514円・加重平均)から上昇の一途を辿り、2017年度には3674円と、5年前に比べ1000円以上も高い水準に到達。直近の2018年4月には前年同月比994円高の4729円と異常なまでの過熱相場を形成した。
予想を上回る騰勢ぶりに関係者には困惑が広がる。都内の食肉卸などへの聞き取りによると、神戸ビーフのロースの納品価格(kg単価)は4等級で18000円〜20000円、5等級で20000円以上と3ヶ月前に比べ5千円前後の値上げとなっている。
大幅な値上げを受けて神戸ビーフの扱いを断念する動きもある。しかし、インバウンド需要で盛り上がる外食は世界的な知名度がある神戸ビーフをメニューから外すことは難しく、コストが膨らんでも仕方なく継続するケースも多いようだ。
しかし、メニューの値上げによりオーダー件数が低下する懸念もある。コストアップした上に、売上まで先細るという悪循環に陥りかねず、従来とは異なる提供方法やメニューの見直しも求められよう。
ステーキで提供されることの多い神戸ビーフは、ロース、ヒレなどのロイン系に需要が偏重しがちだ。半面、カタやモモは夏場に在庫過剰感が増す。例えば、人気が高まりつつあるローストビーフやハンバーガーを神戸ビーフでメニュー化できれば、ロイン系に比べ割安に調達することができる。コストを抑えられるのはもちろん、提供価格が下がりオーダー件数の増加も見込める。
外国人観光客は必ずしもロイン系が食べたいと思っているわけではないはずだ。2020年のオリンピックにイヤーを控え、神戸ビーフの需要はさらに増加していくことが確実視される。今後も神戸ビーフの扱いを継続していくのであれば、ホテルやレストラン関係者は「ロースを提供しなければならない」という固定観念を解放し、ロイン系以外の部位での付加価値化に取り組むべきだ。