2020年は和牛の未来の明暗を分ける節目の年になるかもしれない。19年の和牛価格は消費増税による外食不振、大型台風などの影響で在庫過剰感が強まり、年末にかけて大幅に値下がりした。
建値市場は様々な業者の思惑が錯綜し、必ずしも需給バランスが反映されるものとは限らない。最需要期12月の急落は、膨らむ在庫をよそに実勢のマーケットとかけ離れた相場形成を辿っていたことを露呈させた。
枝価の下落を受け、和牛の子牛価格はすでに下振れ傾向にあり、年明け以降の子牛相場を不安視する声は強い。子牛価格の下落から繁殖農家が離農し、再び和牛の供給基盤が揺らぐ懸念も。一方で企業系の大手は繁殖肥育一貫体制を強力に推し進めており、建値相場による価格変動のリスクを受けにくい体系を確立ものと予測する。
では、中小農家はどうか。政府は海外市場での需要増を見込み、2035年度の和牛生産を30万tまで増強する計画を策定。補正予算案には繁殖雌牛の増頭奨励金が盛り込まれた。
だが、国の助成を利用するために、補助対象となることが第一義になり、本来の事業の目当てを見失い、消費者ニーズを深く捉えきれずに勝機を逃しているケースは少なくないように感じる。
デフレが進む消費飽和の時代に、競合は厳しい。政策に基づき皆と同じアクションを起こした結果、レッドオーシャンに飛び込んではいないだろうか。収益条件の厳しい市場で生き残れるのはほんの一握りの大手のみであることは明白。
やはり量や価格ではない質の追求、差別化で勝ち抜くしかない。相場ありきの取引では限界がある。相場の上げ下げに一喜一憂し、出荷者と購買者で腹を探り合う関係では消費者目線からどんどん遠ざかる。
国内市場の行き詰まりから海外市場に活路を見出しても本質的な課題解決にはつながらない。膨れ上がった在庫の投げ場として中国解禁に期待を寄せるのも危うい。仮に輸出が可能になれば、中国企業は現物ではなく供給元の川上から抑えにかかるとみる方が自然な流れかもしれない。