2020年の東京オリンピック開催を控え、選手や関係者への食材供給を巡りGlobalG.A.P.(適正農業規範、以下GGAP)の取り組みが改めて注目されている。筆者がGGAPの前身、EurepGAPのトレーニングを受講したのは15年も前になるが、残念ながら国内でGAP認証を取得する動きは拡がらなかった。
当時は輸出指向が乏しく、日本独自の認証制度が進められた結果、農協や自治体ごとにGAP的なものが乱立し、まとまりきらず、第三者認証への理解も遅れていた。
国際規格であるGGAP取得の意義は、①食の安全性の担保に加え②生産性の向上③国際市場への参入による販路拡大―など数多い。認証取得には農畜産物を生産する過程で必要な作業を細かい工程に落とし込み、チェックリストに沿って運用し、記録を保存する必要があり、第三者による審査も行われる。
工程1つ1つの項目は単純で当たり前のことのようでも、農薬や医薬品の置き場所、使用方法に至るまで、日頃、何気なく行っていた作業がマニュアルとしてスタッフに共有化され、経営効率も上がる。結果として、自社商品の目指すべきあり方、ターゲットが明確になり、マーケティングにも寄与する。
畜産では、農場HACCPの認証取得企業が少しずつ増えてきた。とはいえ、農水省発表の牛・豚等農場における飼養衛生管理基準の遵守状況(27年3月31日現在)によると、肉用牛では調査農場(大規模1021件、それ以外3万2023件)のうち半数以上が基準をクリアしていない。さらに、うち8割は家保の指導後も未改善だ。豚では4割が基準をクリアせず、うち3割弱が指導後も未改善と報告されており、輸出国の畜産業界に比較し、防疫意識の低さがうかがえる。
米国には豚肉品質保証プログラム(PQAプラス)がある。「全米豚肉生産者協議会」が独自に開発した教育システムで、豚の疾病を予防し、動物用医薬品や農薬、飼料剤の適切な使用を推進する。1989年に農場のHACCPとして開発され、2008年にはアニマルウエルフェアを付加しPQAプラスに改訂された。
全米の養豚関係者のほとんどが座学と実践で同プログラムを習得。輸出を行うパッカー(と畜加工業者)はPQAのレベルⅢ取得を購入条件としている。もちろん、米国には「牛肉品質保証プログラム」(BQA)もある。
日本でもPQAのような教育プログラムの導入により意識の底上げを図る必要性を感じる。農場HACCP認証取得の増加やJ-GAPの進展が望まれる。高品質な日本ブランドを確立するためにも、最低限守られるべきガイドラインを一部の農家だけでなく、産業全体に横串しを打つようなシステムが求められているのではないだろうか。