2016年の農林水産物・食品の輸出額は7503円(前年比0.7%増)。13年から4年連続で増加し、過去最高を記録。当初の中間目標だった7千億円を上回った。政府は農産物輸出額1兆円の達成目標を、当初の20年から19年に前倒しすることを昨年8月に閣議決定している。
16年の畜産物の輸出額は25%増の294億円に達した。中でも牛肉は各国での市場開拓に向けて国を挙げて『WAGYU』プロモーションを積極的に展開してきたことから、香港、米国、シンガポールなど世界30カ国以上に輸出され、輸出額は136億円、輸出量は1909トンまで拡大した。
最近は黒毛和牛だけでなく交雑牛の輸出も散見されるが、仮に輸出された牛肉の全量が和牛だと仮定した場合、和牛の国内生産量約14万トン(16年速報値)のうち輸出シェアは1.3%。
しかし、輸出される牛肉は、その多くがリブロースやサーロインなどロイン系が主体。セット輸出は希だ。和牛1頭あたりのロイン系の総重量を60kgとして試算すると、輸出比率は7%程度に相当する。
16年の和牛出荷頭数約44万頭のうち約3万頭分のロインが輸出用に仕向けられたと推測される。輸出向けの牛肉は格付4等級以上が主体であり、高級和牛に占める輸出シェアはさらに高い。
国が掲げる19年の品目別輸出目標で、牛肉は輸出額250億円、輸出量4000トンと現状のほぼ2倍。ロインのみの単純計算では輸出に仕向けられる和牛は6万6000頭、年間と畜頭数の約15%程度までシェアが上昇する計算で、牛枝肉相場に及ぼす影響力も増大する。
もちろん、これまでのようなロインに偏重した輸出では目標量の達成は難しいだろう。バラやモモなどの多部位の輸出拡大が必要だ。それを実現しないと、部位別の需給バランスが崩れ、高値疲れが具現化しつつある国内需要にもマイナス作用が大きくなる。
すき焼き・しゃぶしゃぶ用など和食提案にとどまらず、焼肉やステーキ(モモ系活用)などの商品化技術はもちろん、現地の食文化、料理に合わせた提案で、輸出の多部位化を図ることが不可欠。トータル・カーカス・ユーティリティゼーション=1頭すべてを効率的に活用することは、ビーフビジネスの永遠の課題、世界共通のテーマだ。