東京食肉市場に出荷するようになって多くの人との出会いがあり、私の生き様に潤いが加わりました。業界紙記者当時の片平さんとの出会いがあり、牛肉の旨さ、甘さ、香り、脂肪分析等情報の交換を通じて今も続いています。大変な想いをしながらの仕事だったと思います。
人間社会、業界の裏表もいろんなものを吸収され揉まれながらも我を張ることなく芯を育む生き方を続けておられる事はとてもうれしく思っています。
今人間がおごり・たかぶり・他の生き物・動物・植物・土・水・陽光等自然界の恵みの中でも「いのち」をもらって生きている事を忘れています。
今後いのちを育む生き方・無理なく無駄なく斑らなくみんなに喜ばれる仕事をし、温みを持ちながら生きていかれる事を望んでいます。

・花水三日
稲の花が咲いている盛三日間は根に酸素供給の為、多量の水が必要なのです。
その花粉の嗅い、強烈に感じて稲造りに誘い込まれたのです。
特に「ひとめぼれ」（軟質米）のそれは派手でもなく、しっとりと控え目な香りなのです。
砂糖で言えば「和三盆」でしょうか。

・一黒解鹿頭　天角地眼　耳小歯違（う）
良い牛を選んだり褒めたりする時に使います。
全身黒く鹿の頭（八締り） 角は天に向い目は地面を見、耳が小さく歯並びの良事、鼻は濡れている事等、牛選びで基本は牛飼いの師匠に教わりました。

・米と牛とのつながり
稲の作付は約10haで総て特別栽培米（減農薬・減化学肥料）で有機肥料を多く使い、稲藁は全部飼料用に使い堆肥は好気性と嫌気性のバクテリアのバランスのとれたものを田畑に返してのサイクル態勢で食味80点以上を目指し無理のない稲の姿での収穫をしています。

・米沢牛
米沢牛は旨いと言われていました。
当時は宮城県から導入していました。
全部但馬系の流れでしたので甘み、香り等、DNAの持っているものに単品の配合に米ぬかを加えた餌でうまさができたのです。
米沢で特徴的なのは「米糠」の給与です。
少なければ味はでないし多ければ未消化で下痢するし適量給与が難しいので米沢牛飼育者でも給与しない人もいます。
私の畜舎では米・麦・麩・等膨潤化したものに米糠・配合飼料全てNONGMOで対応しています。
牛は但馬系を中心に導入していますが、枝肉重量が少ないのでなかなか大変です。「おいしいもの」が市場評価に結びつかないのが「くやしい」のが本音。痩せ我慢できるうちはいいのですが。

出会いは食肉通信のころからだからつきあいは長いですね。いろんな肉に対してかなり詳しく、肉のおいしさの追求に打ち込んでいて、頑張っているなあと思っています。一方で今の仕事自体が新しい分野なので、これがどうやって表に出ていくのか、認知されていくのかが課題ですね。歴史のように積み上げている最中で、自分の言葉で語れるようになっていってもらいたいと期待しています。ワインソムリエのように、牛肉の分野でもそれを創り上げ、本当の専門家になってほしい。日本の和牛は世界の牛肉の中でも際立っているから、それを伝えていってもらうことで肥育農家としてのやりがいも感じることができると思います。
オークラビーフはとてもいい取り組みで、新しい形での販売形態。肥育農家とレストランが直接取引をすることで、1年を通して同じ値段で質のよい牛肉を提供することができます。オークラは血統にこだわっていて、その肉の味を強く求めている。特に年配の顧客層も多い中で、肉の味そのものを味わい、胃もたれしない本物の上質の脂を知ってもらう機会になります。繁殖肥育を一貫で行っている松永牧場だからできることでもありますが、このような農家があとに続いてくれたら嬉しいなと。生産者のためにも消費者のためにもなる取り組みなので、コロナに負けずに広めていってほしいと思っています。

「生産者と食卓をつなぐ」、農産物ではそれなりにあったことはあるが、畜産の世界ではなかなかなかった事。肥育農家だけでなく、素牛を生産した繁殖農家にも光を当ててくれたことは非常にありがたいと思っています。
片平さんは本当に肉を愛し、大事にして、良さを広めようとしているのだとつくづく感じています。「我が家で産まれた牛さんのお肉を食べた」ということ自体がこれまでそう多くなかったのですが、片平さんに出会ったことで、「このお肉はどういう農家さんから来たのか」ということをこれまで以上に重視し、味わうことができました。
私たちが育てているのは素牛といわれる子牛たちで、牛たちが落ち着いて過ごせる環境つくりに配慮し、体調不良にはすぐ対応し、牛にストレスをかけないようにしています。
その一方、定時のワクチン接種などは確実に行い、病気の発生を未然に防ぐようにしています。初産の牛にはほぼ100%但馬系統の種雄牛を交配、生まれ落ちが大きくないため、難産事故を防止できます。初産以外は母牛の血統などを考慮し、肉質と増体を共に考慮できる交配を行っています。

片平さんは頼もしいの一言かな。農家のコト、生産者のコトを第一に考え、寄り添って物事を考え進めてくれる。行動力がありエネルギッシュで、どんどん引っ張っていってくれる頼りがいある女性。こちらのヤル気を引き出し、ポテンシャルを高めてくれる。
勉強もされていて知識も深く信頼できる。本当に頼もしいかぎりです。片平さんとお会いして２回目、口蹄疫シンポジウムでのパネラーとして宮崎に来られた際に、視察でうちの牛舎に初めて来られた日を鮮明に覚えています。
自ら防疫服を着て、頭から足の先まで完璧な防疫姿で牛舎内を案内。僕の説明に対して質問攻め。今までいくつも視察を受け入れてきましたが、ここまで真剣に話を聞いてくれて質問を投げ掛けてきた方はいませんでした。
今でこそ片平さんの性格からして理解出来ますが、あの時はちょっと衝撃的でした。 人が生きていく為に必要なタンパク源であり、食して幸せや喜びを感じれる牛肉というものを、生産者の思いと一緒にいかに消費者の方々に届けられるかという事を、常に考え行動してる片平さんに感銘を受け、共感しています。
僕は、牛を飼うというより、牛と共に成長し育み培いあいながらの一生涯をかけた自分の天職だと思っているので、いつも「牛飼い」ではなく「牛養い」と表現しています。
地域の仲間とともに本当に旨い牛肉を作り上げるため。地域の基幹産業としての畜産を盛り上げるため。他の地域との差別化を図り、生産者と消費者共に特別感や満足感を得られるような、幸せを味わえる牛肉を作るため、肥育元牛は地元都城市場のみの導入です。
自分で食べて美味しかった血統を中心に、サシ(霜降り)や増体系にこだわらず、我が家の飼育管理に相性良い子牛を厳選導入。自分の飼育能力を越えない頭数(100頭前後)を養い、多頭肥育ではなく少数精鋭での個別管理を徹底しています。
ワラやエンバクなど粗飼料は９５％以上を地元産で揃え、成長を促進させるような添加物や物質は使わず、細かい飼養管理と牛が持つ生命力。個々の牛の能力を最大限に引き出すことに専念。これが肥育農家。牛養いとしての技術だと考えています。